ケアマネジャーとしてのキャリアの変わり目が近づいてくると、様々な感情が頭をよぎります。
達成感や満足感がある一方で、不安や疑問も浮かぶでしょう。
退職は人生の大きな転機であり、誰もがスムーズに次のステップへ移りたいと思っています。
この記事では、ケアマネジャーが退職時に気をつけるべきことと、トラブルを回避するためのヒントを、実用的なアドバイスと共に紹介します。
1.退職時に気をつけること:前向きな移行のためのステップ
退職するということは、退職される側にとってはあまり嬉しいことではない場合もあります。
そのような中でも、以下の手順を踏み、職場への配慮を怠らず円滑に進めることで、あなたの退職を後押ししてくれる円満なものにすることができるでしょう。
①引き継ぎドキュメントの作成
退職前に詳細な引き継ぎマニュアルを作成し、後任者がスムーズに仕事を引き継げるようにしましょう。
「退職前に、包括的な引き継ぎマニュアルを作成しました。
担当中だけでなく過去に対応した利用者さんの一覧、ケース毎に配慮する事項と苦慮したこと、ケアプランとは関係のないエピソード、例えば最近のご利用さんのブーム的なものや、この話をすると機嫌が良くなる、逆に触れてはいけない話などの情報、をできるだけ細かくリストアップしておきました。
日常からそのような情報もメモ化しておいたために、作成にはそれほど時間は掛かりませんでした。
このドキュメントは、後任者がすぐに仕事に取り組めるように、また後になって組織内でも共有され、退職手続きの一部として採用されたそうです。」
②クライアントとのコミュニケーションを保つ
利用者さんに直接連絡を取り、後任者への紹介、今後の変わらないサポートについて説明することで、不安を和らげるよう配慮します。
「退職の2ヶ月前から、施設側の許可を貰って利用者さんに退職の旨をお話ししていきました。
私への信頼の厚い利用者さんや、特に気になる利用者さんへは、引き継ぎメインとなり業務負担が軽くなってくる頃に、フリーな時間を使い数回お話しに伺うようにしました。
担当ケアマネが代わることで不安に思われていることを聞き出せたら、そのこともすべて引き継ぐためでした。
このことは利用者さんに安心感を与えるだけでなく、後任者や他のケアマネージャーへ細かな情報を提供できて感謝され、退職への理解を深めるのに役立ちました。」
③事務的な手続きを済ませる
当たり前ですが、就業規則に則って手続きをきちんと済ませましょう。
関係各所への挨拶も済ませましょう。
「退職前に、雇用契約の終了手続きや、未払い給与の計算、残りの有給取得について、普段関わることのない人事部の方とやりとりをしました。
人事部は良くも悪くも入社退社でしかお世話にならないためか、ドライな対応で、手続きは進めやすかったです。
人事部の方からは退職後の行政手続き、例えば失業手当ての受給のアドバイスなど聞くことができました。
また、お世話になった他施設の担当の方々にも挨拶に伺えるものは伺い、無理な場合は電話での挨拶を済ませて回りました。
広いようで狭い業界ですので、きちんと挨拶しておくことで交流のネットワークを維持することは重要だと思います。」
2.トラブルを回避するための注意点:安心して退職できるように
自分では円満な退職をできたとしても、あとで思わぬトラブルに巻き込まれることがあるかもしれません。
ここでは具体例を挙げ、どのような対策を取っておけばよいか、ご自身の退職の際にも役立つケースを説明していきます。
①ケアプランの不備と修正の困難さ
Aさんは退職時に、以前の会社から監査の結果、ケアプランの作成に不備があったことが判明しました。
Aさんは、後任者への電話での対応で済ませようとしましたが、修正は作成者本人が行う必要があると言われ、やむを得ず会社まで出向きましたが、時間的にも精神的にもとても負担が大きかったです。
● 原因:
Aさんがケアプランの作成を急いでいたり、注意散漫だったりした結果、不備が生じていました。
また、そうでなくても監査のプロセスが不十分で、不備が見落とされる可能性もあります。
● 対策:
退職前に、すべてのケアプランを徹底的に見直し、不備がないか確認しましょう。
必要に応じて、同僚や上司と協力して修正し、後任者への引き継ぎをスムーズに行うことが重要です。
②前任者の異常な行動範囲と後任者への苦情
Bさんは、利用者さんからだけでなくその家族からもとても信頼されていました。
それは、ケアマネジャーの業務範囲を明らかに超えた、病院受診の送迎やちょっとした家の掃除や買い物など、利用者さんの個人的なサポートまで行っていたためでした。
後任のケアマネジャーは引き継ぎを受けてはいましたが、上司と相談して、当然ですが通常のケアマネ業務として対応しました。
すると、利用者さんや家族から
「Bさんのときは色々やってくれて助かっていた」
「元のケアマネに戻すからBさんの職場を教えてくれ」
「なぜ前と同じことをやってくれないんだ」
などと苦情が殺到し、後任者は困惑してしまいました。
● 原因:
Bさんが利用者との個人的な関係を築き、その期待に応えようとして、業務範囲を逸脱していたためです。
● 対策:
ケアマネジャーの役割と責任は明確に定義されています。
今までやってきたことはケアマネージャーとしてではなく、個人的な介入であり、後任のケアマネージャーでは対応できないことをしっかり利用者さんや家族に説明しましょう。
代替的な手段、例えば生活介護の割当てや、便利屋などの民間の手段を紹介し、自分が勤務している間に徐々に移行しておくようにしましょう。
③退職期間の制限と組織との対立
Cさんは、2週間前に退職の旨を会社に伝えました。
しかし会社から、
「引き継ぎもあるし、会社規定だから、3ヶ月後まで退職できない」
「後任が来るまでは退職は無理だ」
と告げられ困惑しています。
● 原因:
会社の就業規則がない、または退職について規定や引き継ぎプロセスが明確に定義されておらず、そのために退職時期に関する誤解が生じました。
● 対策:
法律的には2週間前に退職の旨を伝えれば問題ないですし、今回は就業規則に明確な規定がなかったこともありますので、会社側に落ち度があります。
とは言え、退職希望者は、会社に対して退職時期に関してできるだけ早く伝えることが重要です。
どうしても2週間前にしか伝えられない事情がある場合、後任者への詳細な引き継ぎ事項の準備、利用者さんへの説明内容やスケジュール、部署全体で共有して貰っておきたい情報についてなど、会社側を納得させるための合理的な資料や書類の準備は最低限整えておきましょう。
そうすることにより、会社側にも譲歩の余地が出てくることでしょう。
3.まとめ
いかがでしょうか。
この記事では、ケアマネジャーが退職時に気をつけるべきことと、トラブルを回避するためのヒントを紹介しました。
特にトラブル事例は、あなたの場合に起きるかも知れない、退職時の複雑な状況や様々な問題を具体的にイメージすることに役立ったのではないでしょうか?
普段からの職場内外での適切なコミュニケーション、作成したケアプランの定期的な見直し、会社の就業規則に目を通しておくことなどによって、様々なトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
退職を控えるケアマネジャーは、これらのポイントを意識し、スムーズな移行に向けて準備を進めましょう。
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