「訪問看護の仕事に興味はあるけれど、転職に失敗したくないなあ」と、考えている方が多いのではないでしょうか?
今回は、訪問看護への転職を考えている看護師の方向けに「後悔しない訪問看護ステーションの選び方」
について解説しています。
少子高齢化に伴い、訪問看護ステーションの事業所数は、2010年から2024年の14年間で、約3倍に増えています。
訪問看護の需要が高まる中、利用者さんからの訪問看護への期待も大きくなり、要望も多様化していると推測されるのではないでしょうか。
看護師の経験を活かせ、やりがいを存分に感じられる仕事である一方で、「仕事内容が大変で、責任も重大できつい」
という声も聞こえてきますね。
本記事では訪問看護の仕事内容の詳細や、向いている人の特徴、転職の失敗理由なども紹介しています。
訪問看護ステーションへの転職を考えている人は、ぜひ最後まで読み進めてみてくださいね。
1.「訪問看護ってどんな仕事?」仕事内容を理解しよう
訪問看護への転職を考える際に、仕事内容への理解を深めることからはじめてみましょう。
仕事内容を正確に理解した上で、自分の看護師としての目標や、やりたいことと照らし合わせてみてください。
訪問看護へ挑戦することが、看護師として新しい世界が切り拓けると感じたのであれば、訪問看護に挑戦することに前向きに取り組んでみてくださいね。
訪問看護の主な業務内容
訪問看護とは、看護師が利用者さんの自宅に訪問し看護業務を行うことです。
主治医と連携し、利用者さん一人ひとりの心身の状態に合わせ、要望を叶えるための療養生活全般を支援します。
利用者さんのみならず、家族の方からの悩みや相談ごとに耳を傾け支援することも、訪問看護師の大切な仕事です。
薬剤師、ケアマネジャー、ヘルパーとの連携や情報共有、入所(入院)、退所(退院)の際の多種多様な医療機関や施設との調整役を行うなど、訪問看護師の業務は多岐に渡ります。
・健康状態のアセスメント(評価)
病状や障がいアセスメント、全身の健康状態の細かい項目についてのアセスメントを行います。
体温、呼吸、脈拍、血圧、体重、栄養状態、皮膚の状態といった基本的な項目に加え、精神状態や意思疎通などの変化の有無、排泄状況を確認します。
日常生活へ影響を及ぼす症状や状況の有無や、利用者さんの居住場所の細かな変化に気づくことが重要です。
・日常生活の支援
日常生活を快適に過ごせるよう、おもに衛生面の支援を行います。
清潔ケア(清拭、入浴介助等)、栄養管理及びケア(食事の支援、脱水予防等)、排泄管理及びケア(排泄の自立支援、おむつ交換、ストーマ管理)、療養環境の整備(使用している福祉用具の安全確認など)
・心理的な支援
利用者さんや家族の精神的なケアは、
訪問看護業務の中でも非常に重要です。
精神・心理状態の安定化のケア、利用者さんの気持ちや思いへの寄り添いケア、日常生活リズムの調整(睡眠時間や質の把握)、要望に沿った生活・生きがいの支援、家族とのつながり支援や調整、利用者さんの権利擁護(代弁者)
・医療的ケア
訪問看護師は、主治医の指示に従い、利用者さんのご自宅で医療的なケアも行います。
服薬管理、点滴注射、褥瘡・創傷処置ケア、医療機器や器具使用者のケア(経管栄養法管理、様々な留置カテーテルの管理、在宅酸素療法管理、吸引、人工呼吸器使用上の管理等)、病状や症状の管理、主治医への情報提供、急変した場合の緊急時対応
・家族等介護者の相談・支援
利用者さんを取り巻く家族も、さまざまな悩みを抱えているケースが多く、家族の支援も訪問看護師に期待される大きな部分です。
介護・看護負担に関する相談、健康管理、日常生活に関する相談、家族の精神的支援
・エンドオブライフケア
人生の最期を迎えつつある利用者さんの支援で「終末期医療」と呼ばれるケアのひとつです。
訪問看護師として、利用者さんの意思の尊重が基礎となったケアを行い、利用者さんと人生を共にした家族の支援も重要です。
ターミナルケアとよく似ていますが、延命だけを目的にした積極的な治療を行うのではなく、利用者さんのQOLを第一に考え、利用者さんが臨む「生き方」を最期の瞬間まで支援します。
痛み・苦痛等の緩和ケア、食事・排泄・睡眠・休息等の養生生活全般の支援、看取り体制の相談やアドバイス、利用者さん・家族の精神的支援等
訪問看護のやりがい
利用者さんの叶えたい生活の実現につなげられることが、訪問看護の「やりがい」すべてだと言っても過言ではありません。
訪問看護は病棟や病院、医療施設などではなく「自宅看護」であり、利用者さんの望む生活、人生の在り方を自分の看護の力で支援できるからです。
利用者さんの病状や症状、抱えている問題は一人ひとり違います。
定期的な自宅訪問で、利用者さんとコミュニケーションを取りながら生活状況を確認し、見落としがちな改善点に気づけるのは、看護師だからこそです。
訪問看護師は病気を抱えながら自宅で生活する人にとって、自分の望む生き方を叶えるために、なくてはならない存在なのです。
訪問看護の難しさ
訪問看護の難しさで一番に挙げられるのが、「現場では、何事も自分一人で判断しなければならない」ことです。
訪問看護は基本的に一人で自宅訪問し、利用者さんのケアを行います。
自分の専門分野ではない症状を抱えた利用者さんを担当することもあり、その場で主治医や先輩に連絡し、指示を仰ぎながら看護業務を行います。
利用者さんの病状の急変や医療機器の不具合などが生じた場合、自分で判断し適切な処置をしなければなりません。
経験の浅い時期は、「一人で判断しなければならない」という責任の重さに難しさを感じることが多いようです。
2.「後悔したくない!」訪問看護ステーション選び方のポイント
訪問看護師としてのやりがいを求めて転職活動を行う際に、数多くの訪問看護ステーションの求人を見て、どこに応募するか迷ってしまうのではないでしょうか。
転職した後に後悔しない「訪問看護ステーション」の選び方のポイントをご紹介します。
運営母体とステーションの規模
運営母体が「医療法人」と「民営法人」とで、働き方や給与、キャリアアップの傾向が違うという特徴があり、ステーションの規模においてもそれぞれに特徴があります。
自分のキャリアイメージや、やりがいにつながるステーションの特徴を考えてみましょう。
・運営母体が医療法人の場合
安定経営のところが多く、病院が併設されているため、医師との距離が近く情報連携しやすい点が、訪問看護にはじめて挑戦する人にとっては一番の安心感につながります。
仮に訪問看護が合わなかった場合、病棟勤務への異動も可能です。
・運営母体が営利法人の場合
民間企業なので、病院とは違う風土で働きたい人にはピッタリです。
インセンティブ制度が設けられているケースもあります。自分の頑張りが給与に反映されることでモチベーションにつながり、収入アップを目指している人にはやりがいにもつながるかもしれません。
管理者としてのステップアップや独立を視野に入れている人には、経営を学ぶこともできます。
・大規模なステーションの場合
教育体制が整っており、ノウハウも充実しています。経験の浅い若手には大規模ステーションのほうが適切かもしれません。
人数が多いため一人あたりの業務負担が少なく休日の取得やシフトに柔軟性があります。
大規模な組織のため、経営も安定しているところが魅力ですが、個人の意見は反映されにくい傾向が強いです。
・小規模なステーションの場合
アットホームな雰囲気のステーションが多く見受けられます。
看護理念を共有しやすく、同じ考え方の仲間同士で協力しあってステーションを運営する一員だという実感を得やすい環境です。
人数が少ないため情報連携はしやすいですが、休みやシフトの柔軟性は期待できないかもしれません。
オンコール体制
訪問看護ステーションは基本的に24時間体制を取っていますので、オンコール体制については、ステーションを選ぶ際に特に重要なポイントと言えるでしょう。
オンコール体制を確認する際には
「1ヵ月のオンコール当番日数」
「1日のオンコールの頻度」
「1日に受けたオンコールからの必要訪問件数」
という点について、細かく確認しておきましょう。
求人票に「オンコール対応無し」と記載されている場合でも、離職者が複数発生した場合、人手不足を理由に、オンコール対応を余儀なくされる場合もあります。
訪問看護ステーションにはオンコールがつきものですが、オンコール対応について体制が整備されているかどうかは、念入りに確認することが重要です。
休日について
訪問看護ステーションは基本的に平日に営業し、土日祝は休みのところが多く見受けられます。
しかし、訪問看護ステーションは24時間体制を取っているため、土日祝休みの求人であってもオンコール当番が回ってくるかもしれません。
土日のオンコール当番の有無を、面接の際にしっかりと確認しましょう。
利用者の特徴
訪問看護は、小児から高齢者まで幅広く看護業務を行います。
病状も精神疾患や認知症者の看護、精神障がい者の看護、医療的ケア児の看護、末期がん看護など、多岐に渡ります。
ステーションによって、利用者さんの疾患の特徴はさまざまです。
自分の看護師経験との親和性や、自分のやりたい看護ができるかどうかを確認することで、看護師としてのキャリアアップとやりがいを追求できるかどうかを考えてみましょう。
3.「訪問看護師になれるかな?」向いている人の特徴
看護師の経験を活かせる訪問看護師に興味はあるけど、自分が向いているかどうかが気になりますよね。
同じ「看護師」でも病棟や医院での看護業と、訪問看護業では仕事内容の違いもあり、向き不向きがあるのかもしれません。
ここでは、向いている人の特徴をご紹介していきます。
利用者さんの生活に寄り添いたい人
利用者さんが叶えたい「生活や人生」に寄り添った看護がしたい人は、訪問看護で自分の経験や特性を存分に発揮できます。
医療処置も行いますが、病棟看護のように治療がメインではなく、利用者さんの症状や状態にじっくりと向き合い、一人ひとりに必要なケアや支援をするのが訪問看護の特徴です。
訪問看護は、利用者さんの病気の治癒を目的とするのではありません。
現状を維持しながら、利用者さんの気持ちを第一に尊重し、生きがいを感じてもらえる看護がしたいと思う人は、大いにやりがいを感じられるでしょう。
利用者さんや家族とのコミュニケーションを大切にしたい人
利用者さんと家族とのコミュニケーションを第一に考えている人は、訪問看護師として高い適性を持っていると言えます。
訪問看護では利用者さんと家族との関係性の良さが、よりよいケアや生活支援につながる重要なポイントです。
訪問看護で担当する利用者さん、家族の方のタイプはさまざまです。
積極的にコミュニケーションを取れる人もいれば、コミュニケーションが苦手な方や高齢者の方もいらっしゃいます。
どのようなタイプの方でも苦手意識を持たず、コミュニケーションを大切にしながら看護業務に携わりたいと思う人は、利用者さんや家族の方の頼れる存在として活躍できるでしょう。
臨機応変に主体的に対応できる人
訪問看護師は、冷静さを失わず臨機応変に主体的に行動することが求められます。
基本的に一人で自宅訪問をするため、利用者さんの状態の急変や医療機器の不具合が生じたときなど、すべて自分で判断し対応しなければなりません。
冷静に的確な対応をすることで、利用者さんや家族を不安にさせないようにするのも、訪問看護師の大切な役目なのです。
チームワークを大切にする人
訪問看護師の仕事は一人で行動することが多いため、利用者さんの情報共有の連携を密に図ることが重要です。
チームワークを大切にしなければ、質の高い看護や支援はできないと言えるでしょう。
訪問看護師は、看護師メンバー、主治医、ケアマネジャー、介護スタッフ、リハビリスタッフ、行政関係者など、さまざまな人との関わりがあります。
訪問看護師は、チームワークを大切にしながら仕事をするという「意識の高さ」が必要不可欠なのです。
4.「失敗した・・」訪問看護ステーションへの転職の失敗理由
看護師の経験を活かし、訪問看護師に挑戦したいと思っているけれど、転職して「失敗した」と思いたくない人のために、転職の失敗理由を挙げてみました。
訪問看護ステーションの選び方は、訪問看護師として長く勤められるかどうかに大きく影響しますので、ポイントをしっかりとおさえておきましょう。
訪問件数にノルマがある
営利法人の訪問看護ステーションには「訪問件数」「営業件数」のノルマを設けているケースがあります。
ノルマを設けることは、健全な経営のために必要なことであり、悪いことであるとは言い切れません。
一定の利益を得ることで、利用者さんにより質の高い看護支援やケアが提供できるのです。
給与形態にインセンティブ制度が設けられている場合は、ノルマ達成の状況次第で給与が不安定になるケースもあり、退職に至る理由になってしまう原因とも言えます。
書類管理が徹底されていない
訪問看護ステーションでは、行政からの指示によるさまざまな公的書類を管理しなければなりません。
訪問看護計画書や訪問看護報告書、訪問看護指示書、居宅サービス計画書、サービス提供票など、数多くの関係書類があります。
重要書類は保管義務があり、書類の管理がずさんだと国からペナルティーを受けてしまい、ステーションの信用問題にも関わってきます。
書類管理の徹底は、訪問看護ステーションの質を映し出す判断材料のひとつとなり得る、重要なチェックポイントです。
ステーション内の人間関係や環境が悪い
訪問看護ステーションに限らず、人間関係や環境の悪さが、転職に失敗したと思う理由に挙げられることは多いと言えます。
大切なことは、ステーション内の人間関係で何か問題が発生した場合、解決に導ける管理者がいるかどうかです。
チームワークが重要とされる訪問看護業務では、人間関係が悪くなった際に解決策を見出せる管理者の存在が必要ではないでしょうか。
管理者や上司、仲間と相談できる面談室が設けられているかどうかも、チェックポイントのひとつであることも覚えておきましょう。
人間関係の問題を解決できる体制が整っていないステーションでは、長く働き続けることは難しいでしょう。
5.まとめ
本記事では、訪問看護師に転職する際の「後悔しない訪問看護ステーションの選び方」のポイントや、訪問看護師の仕事内容、向いている人の特徴も合わせて解説しました。
訪問看護師は、利用者さんが「自分らしく生きていきたい」という思いに寄り添いながら、看護業務を行います。
「自分らしく生きていきたい」の先に訪れる「自分らしい最期の瞬間を迎えたい」という願いを叶えることに関わり、利用者さんとその家族の心ずっと残り続ける仕事だと言えるでしょう。
訪問看護師は、経験値を積み重ねるとともに、人としても成長できる素晴らしい仕事であり、責任の重い仕事だからこそ簡単にやめづらい仕事であると言えます。訪問看護ステーションを選ぶ際には、訪問看護師として長く働けるステーションを選ぶことが重要です。
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今、訪問看護師として転職をしようと考えているみなさんの訪問を待ち望んでいる利用者さんがきっといらっしゃいますよ。
本記事とみなさんとの出逢いが、訪問看護師として末永く活躍されるキッカケになることを、心から願っています。
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