作業療法士というと、医療機関や介護施設で働いているイメージがありますよね。
作業療法士の資格を活かせる仕事現場って他にもあるのかな？と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では作業療法士として携わることができるいろんな現場を知りたい！という方のために、作業療法士が働く意外なお仕事現場とそのお仕事内容についてご紹介します。
介助犬の育成に関わる作業療法士
介助犬ってなに？
介助犬は肢体不自由者の手足となって、身の回りのあらゆる生活動作をサポートするために訓練を受けた犬のことを指します。
使用者の負担を軽減し、介助犬を通して社会参加の促進やQOL向上といったことが期待できます。
介助犬は主に以下のようなことを手助けしています。
・落とした物を拾う
・指示したものを取ってくる
・扉の開閉
・車椅子の牽引
・着替えの手伝い
現在介助犬を必要としている使用者が1万5,000人であるのに対して、実働している介助犬は約60頭とまだまだ足りていない状態です。
作業療法士はどんな仕事をするの？
身体障害者補助犬法において、作業療法士は介助犬の訓練を行っていくために協力体制を築く専門職の１つに定められています。
作業療法士が携わるお仕事には以下のようなことが挙げられます。
【使用者の障がいの評価】
介助犬の導入を行うためには使用者の障がい評価が必要です。訓練士は介助犬に関わるプロですが、使用者の障がいに対しての専門的な関わりを行なっていくことに関してはプロではありません。そのため使用者の障がいの評価を行った上で介助犬を適応していくために作業療法士の専門性が必要となります。
【使用者の生活の場での環境調整】
障がいのある使用者が生活の場で過ごすための環境調整が必要となります。例えば使用者の起居動作時の柵の位置の調整、介助犬が排泄したものを処理するための工夫といったことが挙げられます。
【介助犬や使用者の役割調整】
生活の場で使用者や介助犬がそれぞれどのような役割を持つことが必要かを考えることも作業療法士のお仕事です。例えば、犬とのコミュニケーションを取るために「使用者に毎日介助犬のブラッシングをしてもらう」といった役割を作ることが挙げられます。
介助犬育成に関わる作業療法士(Mさん)のとある１日のお仕事
＜午前＞
【車で移動し介助犬と街頭募金】
介助犬の育成費用は多くが募金で賄われています。街頭で介助犬と共に募金活動をして呼びかけます。
＜午後＞
【使用者さんのお宅訪問】
介助犬との間で困ったことはないかなど聞き取った上で介助犬と使用者の間の調整を行います。
【犬舎でのお仕事】
餌やりやシャンプーなど介助犬の生活の場所でのお世話をしていくことなくてはならないお仕事です。普段はボランティアの方がお世話に携わることもあります。
災害後の暮らしを支える作業療法士
避難生活での大きな課題【生活不活性病】
生活不活性病とは、文字通り生活が不活発になってしまって精神機能も運動機能も落ちてしまうというものです。
もともと疾患を抱えていた方だけでなく、それまでの生活では不自由がなかった方でも災害による避難生活をきっかけに体の不調が顕在化することがあります。
そうした避難生活の生活環境を整備したり、適切な活動の機会を提供するための仕組み作りに作業療法士が携わります。
作業療法士はどんな仕事をするの？
大規模な災害によって影響を受けた被災地に入って生活しながら避難生活で起こる課題を専門職の視点から解決しようと取り組みます。主に以下のような役割があります。
【避難所における環境調整】
交流の場とプライベート空間の確保、障がい者や高齢者のための手すりや滑り止めの設置の工夫などを行います。
【生活リズムを整え活動性を確保する取り組み】
単調になりがちな避難所での生活リズムを作り出すために１日のスケジュールを整える、小さな集団で活動性を引き出す作業（体操や手工芸など）を提供します。
【心身機能に影響のある被災者への対応】
身体機能の低下した高齢者の方等に対してリハビリテーションのニーズを把握し、必要に応じた機能訓練を提供します。またうつ病などの精神疾患のある方に対しての生活状況の確認や継続的な相談支援などを行います。
被災地でリハビリを受けた当事者事例（Cさん）の実際
＜避難生活により寝たきりになってしまった片麻痺高齢者Cさん＞
避難所では床にブルーシートと段ボールを敷いただけの簡素な造りの中での生活でした。
排泄動作では常時オムツを着用しなければならなかったことから活動量が低下し、寝たきり状態に。
当時を振り返ると「一言で言うと地獄」と話されます。
避難所では看護師や介護スタッフ、リハビリテーション支援関連団体所属の作業療法士等によるリハビリテーションが行われていました。
Cさんは日々数十分間の個別リハビリと集団リハビリに専念し、その後もデイサービスなどを継続。最終的にはトイレ動作が自立するほどに回復されました。
保育や教育分野に関わる作業療法士
作業療法士はどんなお仕事をするの？
保育分野や特別支援学校などの学校教育現場に携わる作業療法士もいます。
子ども達の観察や支援、先生へのアドバイスなどを行います。学校内の集団生活の中で「困りごと」を抱える子に寄り添いサポートします。
他領域での作業療法と違うポイント
【先生をサポートする視点も伏せ持つこと】
支援者側(先生)への支援をすることは他領域であまり経験できないことではないでしょうか。
子どもたちへの対応や関わりに悩む先生たちにも寄り添いながら作業療法としての専門性を活かした助言を行うことも求められます。
保育現場を訪問する作業療法士(Oさん)のとある１日
＜前日＞
前日までの対象児の情報を受け取る
＜翌日＞
【幼稚園訪問】
→観察（運動の時間、昼食の時間、帰りの時間）
【先生たちとの事例検討会】
→気になった子どもの動きや様子、その背景として考えられることについての「見立て」を共有する。
例えば、
「視覚や聴覚、触覚の刺激に過敏に反応しやすい〇〇ちゃんは、入り口や窓際など安心感を得やすい席に座ってもらうのが良いと思います。」
などといったことをアドバイスすることが挙げられます。
司法分野に関わる作業療法士
司法領域における作業療法
司法領域における作業療法は「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」（2005年7月施行）に基づいて入院・通院決定を受けた人に対して、厚生労働省所管の指定入院医療機関で専門的なリハビリとして提供されます。
診療報酬の算定要件には、作業療法士、精神保健福祉士ならびに臨床心理士等の配置が含まれています。
作業療法士はどんなお仕事をするの？
刑務所の受刑者の更生や出所後の生活環境の整備に関わります。犯罪を繰り返す事態を防ぐためにも作業療法士をはじめ臨床心理士や精神保健福祉士、ケースワーカーなど医療福祉の専門職がチームを組んで関わっています。
作業療法士として、出所後に再犯せずその人らしく過ごすために何が必要かを考えるだけでなく、自身の犯した罪と向き合うことを支援することも必要です。
具体的には講義やワークショップを通し犯罪の重大性や被害者の感情などに意識を向けて、自分のやったことを振り返る作業を通して再犯しない意識を作っていきます。
また、受刑者の中では知的障害や精神障害を持つ人が少なからず存在します。そういった受刑者のための環境調整なども作業療法士が担います。
例えば、工場に掲示されている予定が読めない場合に理解できる方法（イラストや写真の使用など）を確認し、それらを取り入れるといったことが挙げられます。
医療刑務所で働く作業療法士(Sさん)のとある１日のお仕事
＜午前＞
【身体障害の方のリハビリ（個別）】
→脳卒中などの障がいのある方に対して生活動作に関連したリハビリなどを実施します。
＜午後＞
【病棟スタッフや刑務所スタッフとの情報交換】
→リハビリ前の患者の状況を把握するために行います。
【精神障害の方のリハビリ（集団・個別）】
→折り紙などの創作活動、ストレス対処法、アサーションの習得など
＜刑務所内作業療法プログラム内容の一例＞
1.呼吸法(姿勢を作る呼吸法)
2.ストレッチ、体操
3.ビジョントレーニング(注意を高める目の運動)
4.両手に白紙を持ち、片手のみで紙を丸めて開く(視覚イメージと運動の統合)
5.レイの複雑図形模写(正しく認知表現する力)
6.BADS(動物園課題:いくつかの可能性を探索する力)
7.ストレッチ、呼吸法
まとめ
いかがでしたか？
今回は作業療法士の働く意外な現場でのお仕事についてご紹介しました。
筆者は作業療法士のお仕事はとても幅広く、人の生活に直接関わることができるやりがいのあるお仕事だと日々感じています。
作業療法士としてのキャリアを築いていくうえでの参考にしていただけると幸いです。
家チカ！メディジョブ千葉版では千葉市で働く作業療法士の方に向けて仕事上で参考になる情報を発信したり、家から通える場所での求人のご紹介をしたりしています。
今後の作業療法士のキャリアを築いていく情報収集のためにもぜひご活用ください。
コメント